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【イベント出演】公園会

  • 執筆者の写真: カナコ・ドンナコ
    カナコ・ドンナコ
  • 2018年1月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2019年4月3日


http://www.park-harajuku.com/topics/485/

2015年3月1日(日)

13:30 OPEN / 14:00 START /  18:00 CLOSE

2.5D (渋谷PARCO part1 6F)


詩の朗読とライブドローイングをしました。


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拝啓 私のおねえちゃん


おねえちゃん、おねえちゃん。 私の、私の、おねえちゃん。 もういい年なのに リボンを付けた、おねえちゃん。 リボンみたいね、おねえちゃん。

ねぇおねえちゃん、 私この前 生まれて初めて、小鳥を買ってもらったの。 生まれて初めて、小鳥に触ったの。 ねぇおねえちゃん、 小鳥の心臓って、とても速く動くのよ。 小鳥の瞳って、とても黒くて丸いのよ。

その小鳥は、ちっとも鳴かない小鳥なの。青い羽の小鳥なの。 小鳥をカゴに閉じ込めて、小鳥の瞳をじっと見つめて。 青い青い小鳥の羽。すぐにでも、もいでしまえたはずなのに。 私、そうはしなかったの。 かわりに扉を開けておいたの。 次の朝、鳥かごの中は空っぽだったの。

ねぇおねえちゃん、 おねえちゃんも、 かごの扉は開けておくのかしら?

ねぇおねえちゃん、 双子は遠く離れた場所にいても、互いに同じ夢をみるというわ。 それならば、それならば、よく似た姉妹はどうかしら。 私が悪夢を見る夜は、あなたも悪夢を見るかしら? うなされて、目を覚まし、時計の針は午前3時。 カッチコッチと音は響いて いよいよ私は眠れない。 ふと見れば、暗がりの向こうから白い手がおいでおいでと手招きしてる。 あの細くて長い指、なんだかおねえちゃんのような気がして、 暗闇の先、私はじっと目をこらす。

でも、

私にはあなたの顔が見えない。 あなたの顔が、思い出せない。 白い手は、その正体を明かさぬままに、なお手招きを繰り返す。 時計の針は4時を指し、私はまるで呪文のようにあなたの名前を唱え続ける。 それは、もうとっくに、捨てられた名前なのだけれど。

ねぇ、おねえちゃん。 あなたは本当に沢山のものを残していった。 私のためにじゃないことは、私が一番分かっているよ。 だってあなたの忘れものは、ことごとく私にとってちぐはぐだから。

あなたの残した口紅は、私にはいささか赤すぎたし、 あなたの残した香水は、私を窒息させてしまう。 あなたの残したワンピース、私の体を締め上げて、 あなたの残したピンクの靴、あんなヒールじゃ私は歩けない!

おねえちゃん、あなたの足取りは軽やかで、ダンスを踊るようだった。 真っ直ぐに伸びた綺麗な足、その足で、 何処までも何処までも行けることでしょう。 たくさんのたくさんの花びらを踏みつけながら。 さえずるように息をして、 その長い髪に幾重にもリボンを巻き付けて。 この世のありとあらゆる醜いものやみじめなものを、 何もかも何もかも、あの鳥かごに置き去りにして。

私はずっとここにいて、あなたの名前を呼んでいる。 もっと正確に言うならば、かつてあなたの名前だったもの。 捨てられた、持ち主のない名前たち。 私はそれを手放せない。

だから、おねえちゃん。 私はあなたに手紙を書こうと思います。 この名前が、砂に還るより早く。 あの白い手が、手招きをやめるより早く。 ほんのひと時、リボンの端をたぐりよせ、 あなたの背中に、私の背中を寄り添わせ、 慣れないインクをしたたらせ、 金色のペン先を走らせて。

大丈夫、封筒に宛先は要らないよ。 青い小鳥が、きっと運んでくれるから。

ねえ、おねえちゃん。  ねえ、おねえちゃん。 私の、私のおねえちゃん。

拝啓、拝啓、拝啓

拝啓、おねえちゃん。

私、こんなに前髪が伸びたよ。 私、こんなに背が伸びたよ。


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